林芙美子記念館見学

先日の連休を利用して、以前から見に行きたいと思っていた住宅、林芙美(現・林芙美子記念館)への訪問が叶いました。

そうです、『放浪記』『浮雲』などで知られる往年の女流小説家の家で、モダニズムの建築家山口文象の設計により昭和16(1941)年に竣工した建物なのです。和風モダンへの工夫が随所に見られ、とても興味深い建物でした。

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日本の伝統的な和風のたたずまいの中に、モダンな感覚が活かされているのがわかります。
白い障子に注目してみましょう(▲)。「太鼓張り」と言って、和紙を両面貼りとし桟を見えにくくしているのがわかります。これは白い障子戸をひとつの四角い幾何学的な面に見せようとした工夫なのです。

そのようにして、意識的に家全体をと柱型による、それに床面によるシンプル「構成」としてデザインしようとしたことが見て取れます。つまり現在俗に言う「和モダン」のさきがけとも言えるでしょうか。

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林芙美子の住宅建設へのこだわりは相当なものだったと伝えられています。住宅関係の本を大量に買い漁り、京都へ見学に行き構想を練ったとのことです。
そうして形づくられた住宅への希望によって、庭にはたくさんの竹が植えられていたそうなのですが、現在では細い竹が玄関周囲にほんの少しだけ残っているだけでした(▲)。

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特筆すべきは、当時としては珍しく水廻りの設備などを機能的に充実させていた点です。

人研ぎテラゾーの複雑な形に造り出された流し台は、今日のシステムキッチンの先駆けを見る思いがしました(▼)。これもモダニズムの住宅を十分意識して設計された証左です。

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使用人室では2段ベッドが造り付けになっていました(▼)。木製ですがまさに「住むための機械」のようなイメージ、設計者山口が戦前から目指していた一般労働者のためのモダンな住宅をここに見た思いがしました。

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建設された当時は戦時下の統制により規模の大きな家を建てることはできませんでした。それで希望した家を建てるために、林夫婦別々の名義で2棟建て、後で中庭を挟んで2棟をつないだのだそうです(それが却って中庭式の面白い空間になっていましたが)。

ご主人緑敏氏の建屋はアトリエでした(▼)。明らかにモダンな造りです。太鼓張り障子ので光が和らげられた大窓、それにトップライトは圧巻です。

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以上、設計士のぶらり散歩でした。

ではまた。

 

 

林芙美子記念館見学

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